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2016年2月 2日 (火)

6.『サマーキャンプ』

結局、会場の天神山スキー場に着いた時には、ライブ開始予定時刻から一時間ほど過ぎていた。この時点で既に雨足はかなり強くなっていた。だがそんな事より、出遅れたのを少しでも取り戻さなければ。

バスから降りた時点で、すでにバンドが奏でる轟音が聞こえた。やはりライブは予定通り始まっているようだ。僕達二人は猛ダッシュで入り口ゲートに向かって走る。入り口でチケットを渡すと、タワーレコードのお馴染みの黄色い袋にチラシなどを詰めたものを渡される。はっきりいって邪魔だったが、この場に来たという記念になるかと思い取っておくことにした。

取りあえず会場案内図を確認する。

Photo

初年度のフジロックフェスティバルは、天神山スキー場内にメインであるホワイトステージと、セカンドステージであるグリーンステージ、二つのステージが少し離れて設置されていた。雨脚もだいぶ強くなってきたし、僕達は取りあえず目の前にあるメインのホワイトステージに向かう事にした。

天神山スキー場はその名のとおりスキー場で、ゲレンデのなだらかな傾斜の一番下にステージが設けられていた。つまりステージから遠ざかるほど、ステージを見下ろす格好になる。ホワイトステージエリアで広さは東京ドームのグラウンド二つ分くらいだろうか?

ステージ近くに到着すると、既にサザンカルチャー・オン・ザ・スキッズは終わったようで、2バンド目のサマーキャンプの演奏が始まっていた。正直全く知らないバンドだったのだが、曲も演奏もメンバーも、そして骨組みが丸見えな無骨な巨大ステージも、雨の中日本初の野外ロックフェスに興奮し踊り狂う観客も…。何というか、僕達はその雰囲気に一発で「ヤラれて」しまった。

「格好良いな!」
「ああ、なんかスゲーぞ!」

これが野外フェスティバルなのか!

それにしてもサマーキャンプ。夏のこの日に、この場所で演奏する為に結成されたかのようなバンド名じゃないか。大学生みたいに爽やかな外見だが、演奏はなかなか重い。曲はパワーポップという感じで、コーラスワークが見事だ。野外ライブという事で音響は期待していなかったが、思っていた以上に良く聞こえる。

目に見えて雨は強くなっていく一方だし、物凄い風まで吹いてきた。もはや暴風雨の域。野外でライブを見るには最悪の環境、というかこんな状況で外にいる事自体馬鹿げている。しかしその事が逆に、その場にいる皆のテンションを異常に上げている。そして恐らくこの会場に到着するまでの諸々のゴタゴタやストレスも、皆のテンションを上げる事に関係しているのだろう。

そんな異様な熱気を受けて、バンドも気合の入ったパフォーマンスを繰り広げる。相乗効果で会場の熱気は上がり続ける。どんなに静かな曲をやろうとも、必ずどこかでモッシュが起きている。降り注ぐ雨が火照った観客に当たり、すぐに蒸気になって天に昇っていく。大袈裟ではなく観客から立ち上がる白い煙でステージが見えない。

「おいおい、まだ二バンド目だろ?」

僕と杉内は顔を見合わせて笑うが自分達自身も物凄く高揚していたのか、いつの間にか最前列付近に到達してしまっている。恐らく僕と同じように殆どの人がこのバンドを知らなかった筈だ。冷静になってしまうとちょっと怖いくらいの雰囲気。だから僕も理性を捨てて暴れた。実はこれまで、音楽が大好きであっても、ライブで弾けるなんて性格的に恥ずかしくて一度もなかった事なのに…。

とにかく僕達にとってのフジロックフェスティバルオープニングアクト、サマーキャンプは圧巻のパフォーマスンを見せつけて、ステージを降りていった。

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